(社)全日本オートレース選手会船橋支部所属の坂井宏朱(さかい・ひろみ)選手(第31期・享年27歳)は、平成24年1月15日、千葉県営第4回第2節2日目の夕方練習中、第1コーナーにおいて単独落車し、かなりのスピードで緩衝柵に激突した。すぐにドクターカーが到着し同選手に対し必要な処置が取られたが、手当のかいなく頭蓋骨骨折により同日17時13分に死去(殉職)した。まさにオート界に衝撃が走った―。
この日、約3千人が来場した船橋オートは何事もなく開催を終了した。事故が起きたのはファン不在の夕方練習の時だった。坂井選手は当日第1Rに出走(6着)、8月21日以来の2つ目の勝利をめざし練習中での痛ましい事故に遭った。後ろで走っていた鈴木一馬選手によると、坂井選手はゴール線過ぎから体勢を崩し1コーナーで単独落車。先に身体だけフェンスに当たり、その身体が跳ね返った時に自らのマシンと激突したという。
【追 悼】公営競技でまた痛ましい事故が起きてしまった。デビューから僅か半年、それも明日の勝利を夢見ての夕方練習中に…。「44年ぶりの女子選手としてデビューし、多くのメディアに取り上げられるなどオートレースの社会的認知度に貢献」したとして平成23年表彰選手の『特別賞』を受賞した矢先での訃報とは。最初は成績が優秀な佐藤摩弥選手(19歳・川口)が単独候補だったが、選考委員会で両者を推挙する声が上がり、選考委員を務める筆者も「この賞で坂井選手が自らを鼓舞するなら」と賛成した。同選手は「常に前向きで練習は人一倍」と努力の人も、成績はもうひとつ…。しかしトークショーや企画イベントには引っ張りだこ。媒体への露出度は大きく、それが成績と反比例するジレンマもあったのだろう。男社会の中でたった一人の女性として同等に振る舞わなければそれは落伍者となる。志半ばで帰らぬ人となったが、佐藤選手や同選手に続くなでしこレーサー誕生のためにも、かけがえのない存在を私たちに教えてくれたと思う。合掌―(担当・高野幹夫) |