【 コラム colum 】

公営レース賛成派
〜客 席 か ら 本 音 で 語 る 公 営 競 技 〜


公営競技ライター 沢 ともゆき

その一 『客席から見た公営競技の現況』 

 週間レース読者の皆様初めまして。私はインターネットにて『公営レース賛成派』なるホームページを運営しております、普段は単なる客席の一ファン。取っても取られても楽しい、大好きなレースギャンブル。そんな身にとって、ここ数年来の急激な売上減による公営競技の衰退化は由々しきこと。私にも一応今後の人生設計がありまして、「50歳までに一生食べていけるお金を(本業で)稼いで、以後の余生は毎日打って過ごしたい」のですが、肝心の競技がなくなってしまっては元も子もない。全国で廃止になるレース場、撤退する施行者が相次ぐ状況の中、これまでさんざん楽しみを覚えさせておいて(お金もさんざん使わされて)、ハシゴを外すようなことをされてはたまらない。現在、そして老後の楽しみを奪うな! と憤った次第。そのやり場のない怒りと、何かしなければ! という思いで、「打って残そう公営競技」をテーマとしたホームページを開設。「公営レースの楽しさ」と、「これを存続させるには」を主眼に文筆活動を開始いたしました。

 まず、レース場に行って客席をご覧あれ。ほとんどの場で10年前に比べてお客の入りが激減しているのはもちろんのこと、客席平均年齢の上昇は激しく、これは地方自治になぞらえて言えば「過疎高齢化」そのもの。都市圏の一等地に過疎な土地があるわけで。特に平日のヒラ開催などで周囲を見渡せば「ああ…コレはあと15年したらなくなるな」と、普通に思ってしまう。50〜70代の年齢層に対し、20〜40代はその十分の一もいないでしょう。この「パッと見ればわかる」状況を、実際競技に携わる方々はどこまで真剣に受け止めているのかがまず疑問。まぁ受け止めてはいるのだろうが、実際の施策にほとんど現れていないことは結果(売上減)が物語っている。

 もちろん、年配ファンを悪く思っているわけではない。むしろ個人的には人生の、そしてギャンブルの大先輩として尊敬申し上げているし、人生訓から目の前のレースの予想まで色々お聞きしたい。そして、そんな大先輩たちからも、昨今は「最近は若いヤツがいないなぁ」とお嘆きの言葉を多く耳にする。先輩だって、後輩たちと話がしたいのだ。よくレースの合間にオッズモニターの下で考え込んでいると「どれが来るかね?」「若い人の予想を聞きたいな」という感じで話しかけてくる先輩がいるが、そういう触れ合いはギャンブル好き同士ならではのものだし、人間関係が希薄になった現今では、逆に宣伝材料にもなり得ると思うのですが。

 宣伝・イメージという点で他レジャーに大きく遅れを取っているというのも偽らざる現状。少なくとも現在の公営競技コマーシャルにおいて、他レジャーに勝ると思えるものは、申し訳ないが一つとして無い。更にハッキリ言えば「現状を見据える目がない」し、「魅力を伝えるための基本的センスがない」よ。広告代理店関係者などに話を聞くと、特にテレビ媒体などにおいては「いたずらに射幸心を煽ってはイケナイ」などをはじめとした各種制約が多くあるとのこと。しかし、メディアにおいては何らかの制約があるのは当たり前で、それを踏まえてより効果のある形で、と考えるべき。特に昨今は、競技自体と何の縁もゆかりもないタレントを起用してのCMなどが多いが、集客効果があるとは思えない。もっと競技自体の面白さ、レース場の魅力を伝える映像はアイデア次第でいくらでも作れるはずでは。

 今まで見てきた中にも「これは良い」と喝采したくなるものはいくつかあって、たとえば数年前の競輪であった「武士が城内廊下で雑巾がけ競争をしている」CM。競技を知っている人間は思わずニヤリとするセンス良いものだし、同席する素人さんにも「競輪って、これを自転車でやってるような感じだよ」と面白おかしく伝えるのをきっかけに、「差しとか、マクリとか、いろんな決まり手があって…」 と、更に話を広げることができる。あと、競艇で有名選手を総動員した「水の上では先輩も後輩もない!」というやつ。こういう選手たちが水上で真剣勝負を繰り広げているんだ、という白熱度が伝わるものだった(欲を言えば個々の選手のキャラクターをもっとクローズアップさせて欲しかった)。同じく競艇では住之江・名人戦の第一回のCM「若い者がナンボのもんじゃい!」も印象に残る。故・横山やすし師匠のあの声であのフレーズを叩きつけられた日にゃ、思わずハッ! と画面を見てしまう。インパクトという点ではあれが一番だった。CMについては、今後最低でも他レジャーと同等、もしくは(制約が多いだけに)それを越える感覚をもってしないと、広告を打つ意味がない。

 そして、いくら広告宣伝が良くても、肝心のレース場が魅力ないものではしょうがない。数あるレジャーの中で「コレにお金と時間を使いたい!」と思わせる(選ばせる)場所でなくてはならない。そう考えた(であろう)全国施行者さん達が、色々な企画をもって「レース場のアミューズメント施設化」を進めている昨今ではあるが、この中身にもまた勘違いが多いように感じる。ただ人を集めようというだけで、どういう層を集めるべきか、また、ギャンブル場でお金を出す(投票券を買う)ようにするためにはどういう状況に置けばいいのか、という視点が欠けている。

 例えば「家族連れを呼び込むための」各種子供向け企画(ミニ遊園地とか、戦隊ショーとか)。確かにそれで家族連れの来場はあるかもしれないが、お父さんが家族と一緒で心おきなく打てるのか!? オトコがギャンブルする時ぐらいは家族から切り離したほうがいいんじゃないのか!? とも思う。子供は投票券を買えないし、女性は元来賭け事を嫌悪する傾向が強い。無理して家族連れを呼び込む必要があるのだろうか。男が弱くなり、女子供が流行を作る世の中になったことは憂えつつも否定はしないが、ギャンブルというものの特性を考えれば、むしろそんな流れに逆らうことも必要なのでは。 つまり、「この世の中で数少ない大人のオトコの居場所」という線を狙うという手もアリなのでは、と思うのだ。もちろん「女性はレース場に来るな!」というわけではない。歴史が証明しているが、オトコが我を忘れて熱狂するものには、必ずイカシた女性もついてくるのです。スポーツしかり、ロックミュージックしかり。そう、今のレース場には「熱狂」が無い。

 初回から辛口な物言いばかりになってしまいましたが、公営競技を心から愛する者の発言として、今後もご愛読いただければ幸いです。次回以降は、今回大まかに記した各件について、更に細かく提言をしてゆきたいと思います。

(2006年6月20日号)


筆者●沢ともゆき プロフィール

昭和40年代前半生まれ。東京下町在住。20代の頃より全公営レースを最大の趣味とし、本業(旅行ガイドブック取材編集)のかたわら全国レース場を渡り歩く。現在は自ら雑誌編集・デザイン事務所を主宰。本年より公営競技ライターとしてデビュー。

『公営レース賛成派』 <http://www.sanseiha.net/>
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