【 コラム colum 】

公営レース賛成派
〜客 席 か ら 本 音 で 語 る 公 営 競 技 〜


公営競技ライター 沢 ともゆき

その九 『反対派の人々〜賛成派流教育論』

 さる9月下旬、千葉県習志野市に競艇の場外施設「ボートピア習志野」がオープンした。例によってここでも地域住民の激しい反対運動があり、よく開設にこぎつけたものだと思う。現に、反対派のホームページ上では、オープン後のここ両日でもいまだ「更なる抗議行動を!」といったような呼びかけすらある。なぜそこまでムキになるのか…は、ギャンブル大好きの私には当然理解できないのだが、言わんとすることは伝わってくる。中でも多く言われるのが「子供の教育に悪い」というものだ。正直もう聞き飽きたが。

 そもそも、「現在の」レース場・場外施設が近所にあると治安や子供の教育に悪いだろうか?
 いつも当欄で書いているように、現在の公営ギャンブルは世代交代策に失敗したがゆえに客席の高齢化が進み、スタンドにいるのはお年寄りばかり。言っちゃぁ悪いが、暴れたり、帰り際に周辺の人に悪態ついたりするパワーなんかありません(と、言い切るのは寂しいがそれが現実)。まずその点、時代錯誤をしないようにしましょう。私の目にはレース場のお客よりも、朝、開店前のスロット屋の前でタムロしている若者の方がずっと危なげに見えますが。
 そして最も重要なのは「ギャンブル自体が悪なのか」という点。もちろん、決してそんなことはない。よく、ギャンブルで借金して家庭崩壊だの、犯罪を起こすだのといった事件がクローズアップされるが、極論すればギャンブルがなくても、自堕落な人間は何か別の原因で身を持ち崩すし、ギャンブルとは関係なく、犯罪を起こす奴は起こす、のである。「ギャンブルが悪い」のではなく「人が悪い」のだ。だから、「ギャンブル反対!」と叫んでいる暇があるなら、人を、子供をしっかりと教育するべきなのだ。自分で。

 『私は競輪・オートレースともに楽しんでいる者で、今回の施設には非常に期待をしております。 地元の皆さんの反対運動は「風紀が乱れる」というのが主旨のようですが、それはあまりにも我々を馬鹿にしていないか。もっと言えば、ギャンブル好きの人間に対する差別ともいえる。
 実際、私や周囲の仲間がレース場およびその周辺で、風紀を乱すような行為をしたことはありませんし、ギャンブラー=風紀を乱す人間と決めつけるのはいかがなものか。反対している人たちの中にだって、パチンコくらいやる人はいるでしょう? 逆に、ギャンブルはやらなくても、酒を呑んで街で暴れてる人もいるじゃないですか。
 風紀が悪い、というのはその街の空気そのものに問題があるのであって、単なる一施設の有る無しで極端に風紀が変わったりはしませんよ。
 子供に悪影響が、という意見もあるようですが、子供だって、大人になればパチンコやったりはするのであって、ギャンブルを遠ざけるのではなく、ギャンブルで身を持ち崩したりしない、他人に迷惑をかけない、と教育することが大事。その教育もしようとしない大人(親)が、とにかく車券場さえ出来なければなんとかなる、と思っているようじゃダメです。逆に、車券場をいい教育の場として使えばいいではないですか。とにかく、決めつけと偏見に満ちた反対運動には全く賛同できません。』
 以上はつい先頃、事実上の開設中止となった東京・池袋駅前に開設予定だった競輪・オートレースの複合場外施設の反対派ホームページに対し、私が送った反論メールである。 
 相手方は当然のごとく全くの無視で、今に至るまで何の返事もなし。だいたい、「メールでご意見を」と募っておいて、それを公表するスペースが存在しないのだから身勝手な話だ。反対派に都合の良い意見が来た時だけ掲載するつもりなのかネ。

 早い話、「教育云々」と言ってくる反対派の人々は、「自分の教育の至らなさを他のモノ(この場合場外施設)のせいにしているだけ」なのだ。全てのギャンブル賛成派の皆さんはまずそれを念頭に置き、彼らに対応していくべき。これは、そんな大きな話でなくとも、例えば家庭で子供に「ギャンブルはダメ!」とやみくもに教えようとする母親などにも当てはまる。「禁じるのではなく、良い付き合い方を教える」のが親の役目だと思うのだが、いかがだろうか?

 結局のところ、こうした反対派市民的な発想が、いまだに公営ギャンブルの世間的イメージを悪くしているのである。人間(特に男)が成人になれば、普通はギャンブル場への興味が湧くはず。今の若者がなぜそれをしないかといえば、子供の頃から「ギャンブルは悪。レース場は暗い、汚い場所」と教えられているからだ。
 高度成長期以降の核家族化で、父親は仕事で不在、祖父などはもちろんいない、という環境の中、母親が男の子を育てるようになったのがイケナイ。女性は元来保守的なので「ギャンブルは悪」と教えがちだ。そして、親に「これならいいよ」と教えられた安全?な遊びだけしか知らずに大人になってゆく(大人になっても自室でTVゲームに嵩じる男性を私は認めない)。でも、そんなツマラナイ男を大量生産して、結局ワリを食っているのは女性達なのだが。「あ〜あ、つまらない男ばっかり」と嘆く現代女性たち。ならば男をキチンと遊ばせなさい。

 …とまぁ、努めて感情的にならず冷静に記したつもりだが、反対派の方々にも少しは汲み取っていただけるだろうか? それともこの先もずっと平行線なのだろうか?

(2006年10月20日号)


筆者●沢ともゆき プロフィール

昭和40年代前半生まれ。東京下町在住。20代の頃より全公営レースを最大の趣味とし、本業(旅行ガイドブック取材編集)のかたわら全国レース場を渡り歩く。現在は自ら雑誌編集・デザイン事務所を主宰。本年より公営競技ライターとしてデビュー。

『公営レース賛成派』 <http://www.sanseiha.net/>
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