レースは進むが、そんな光景を眺めながらではあまり馬券を買う気もせず、場内をうろつくうちに時間ばかりが過ぎてゆく。そういえば、今日の岩見沢・帯広両市長の会見はともに15時前後に行われるらしい。もうその時間だ。
何はともあれ、どういう結果になったのかは知りたい。開催本部のあるスタンド最上階へと向かう。失礼します、とやや控えめに発声して室内を覗くと、電話の前で座っている広報氏、そしてそれを取り囲むようにして見守る新聞記者数名。
「まだですかね」「だいぶ長引いているらしい」などと、時折話す他は、焦げるような沈黙が続く。私も成り行き上、一緒に一報を待つ形になったが、今思い出しても居づらい、嫌な数十分間。
脇のモニターで11レースが発走しようという頃、電話が鳴った。「岩見沢、撤退」……。
岩見沢撤退、イコール競技全廃(帯広が「1市開催は無理」と表明していたため)という認識がもっぱらだったこの日。つまりはこの時点で「ばんえい競馬廃止」である。いたたまれなくなった私は、スキを見て部屋を離れ、最終レースを打つべく客席へ戻った。
その晩は、競馬組合の御仁にお誘いをいただき、打ち上げの宴に参加させていただいた。共に飲み、話をした事務や発券の女性たちは、北見開催期間中だけの「季節労働者」だ。1年間のうち、たった2ヶ月間だけの仕事だが「毎年競馬が来るのが楽しみだった」と口を揃える。北の女の気丈さか、涙こそ見せないが、その競馬が来年からはもう来ない、という言いようのない寂しさが言葉の端々から感じ取れ、慰める言葉もない私は、全く関係もない馬鹿話を仕掛けながら差し出される杯を受け続け、すっかり酩酊してしまったのだった。 |