【 コラム colum 】

公営レース賛成派
〜客 席 か ら 本 音 で 語 る 公 営 競 技 〜


公営競技ライター 沢 ともゆき

vol.15 「Xマスは大忙し!? ギャンブラーはつらいよ」


公営競技史上最大級クラスのビッグレース競合となった昨年
12月24日。筆者は住之江競艇・賞金王決定戦の現場で全競技打ちを敢行!


  これが載る号は1月下旬発売だそうだが、書いているのは12月24日。大阪住之江競艇場のスタンドなのである。
 今年のクリスマスイヴは公営競技界的にはかなり大変なことになっており、まず国民的人気を博した馬の引退レースとなる有馬記念、そして川口ではオートレース界の最大イベント・スーパースター王座決定戦。そしてそして、ここ住之江では賞金
王決定戦と、全競技打ちの身としては誠にもってつらい…いや、心躍る日。全国のマルチギャンブラーの皆さん、共に頑張りましょう。

 昨夜の時点で決定戦の買い目は決まっている。後は種銭を増やすのみ! 住之江・SG・最終日…とくれば、インから買い続けるのが鉄板セオリー。簡単簡単…、と考えていたら1、2Rと連続して4号艇のカドまくりが決まり、共に3連単万舟券。うう、イヤな予感。しかし、その後2レース連続でイン逃げ決着。お、やっぱりインが来始めたか…と思いきや、5レースはまた3号艇のセンターまくり勝ちと、2レースごとにレース傾向がコロコロ変わる。これは非常に買いづらい。さぁ、この後どうするか。

 住之江名物・モツうどんなどをすすりながらふと新聞を見ると、今日の占いの欄に「勝負:仲間との検討が必要」とある。それで急遽思い立ち、記者席にいらっしゃるであろう本誌編集長に電話をしてみたところ「ではこちらに来ませんか」とのお誘い。本来ヒラ席派の私としては、記者席というような場所はちょっと苦手なのだが、一人で打っていても当たらないような気がするので、お言葉に甘える。
 バックヤードの入り口まで迎えに来ていただいたT編集長と共に3階の記者室へと向かった。

 7Rを4号艇・井口佳典のアタマで2連単ゲット。ようやく取れたよ。よし、この調子で…と意気込んでいた8R展示後、脇に座るT編集長をちらと見ると、予想紙を見ながら考え込んでいるご様子。買う気ですな。それではと舟券勝負を挑む。
沢:「いっそのこと誌上勝負といきませんか」
T:「い、いいですよ。受けて立ちましょう」
 いきなり決まったこの企画、同席の編集・O氏も加わっての3者対決と相成りました。ルールは8・9Rの2個レースで合計5千円を投じての残金勝負。

 8Rは全員が1号艇・烏野のイン逃げを嫌った買い目。これはひょっとして…と思えば案の定、結果はあっさりのイン逃げで1−2−4。

【9R 特別選抜A戦】
1 飯島昌弘
2 田中信一郎
3 渡邉英児
4 白井英治
5 西島義則
6 星野政彦

 

 スタート展示はインから1235/46。西島にしては地味だが、一応動いた。こうなるとどこからでも買えそうなレースという印象で、3人の買い目も今度はバラバラ。T編集長は3.渡邉のアタマ中心、編集О氏は2.田中が中心、そして私は飯
島−西島からの3着流し。これならさすがに誰かが取って決着がつくに違いない! …と思ったのだが…逃げた飯島を1周2マークで田中が差して2−1−4。あ?誰か買ってる?
 かくして舟券勝負は、ほぼ企画倒れに等しい「全員オケラ」という情けない結果に。大丈夫か!? 本誌編集部。

 さぁ全国的大イベントの時間が近づいてきた。そう、言わずと知れた有馬記念である。ネット投票も混むだろうし、そろそろ…と、パソコンを開き、シコシコと購入手続きを行う。「競輪は展開、競艇は進入、オートはマシン、競馬は騎手」で買う私としては、もちろん武豊=ペリエのウラオモテ、である。今回の武騎手は、なんとかという有名な馬に乗るらしいが、馬は眼中にない。タケユタカから買う、のである。

 記者室のモニターで中山を観戦。気がつけば、他の記者さん、関係者の皆さんもほとんどがモニターを囲んでいる。あのう、目の前でシリーズ戦優勝した赤岩選手のインタビューやってるんですが(苦笑)。
 タケが直線飛んだ。そしてペリエ。3着を有力馬で流しておいたので3連単ゲット! 90倍もつくのかよおい。これは目の前の競艇の負けを補填して余りある儲け。これで余裕を持って賞金王決定戦に臨めるというものだ。ふふふふ。

 川口でもSS戦の試走が済んでいる時間だ。現地にいる友人Tに電話をして尋ねる。1号車荒尾、27…おぉ速いな。2号車伊藤、26…まぁそのぐらいは。3号車池田、24…え、マジで? 4号車田中…に、23!?
「おいちょっと待て!」
「な、何?」
「俺をダマそうとしてないか!?」
 しかしその試走タイムは本当であった。ちょっと出過ぎじゃないか、川口の新走路…また事故でも起きなきゃいいが。 とりあえず朝からの予定通り浦田信輔(飯塚)中心に投票。

 決定戦が近づいた。記者室を出て一般席へと戻り、舟券を購入。やはり水面で観戦したい。 締切りが告げられる頃には、すでに薄暮を通り越し、夜の闇が迫る。いよいよ発走だ。進入は枠ナリ。大時計の針が動くと途端に胸が締め付けられるような毎年恒例の感覚が襲ってくる。
 外から5号艇・中村が物凄いスタートを切ったのはわかった。しかし、1号艇・松井のイン逃げを阻む前に、割って入った4号艇の後尾に接触。それから十数分後、地元松井繁が王者の証である黄金のヘルメットを被ってウイニングランを行っているところへTからの携帯コール。
「どうなった?」
「今、目の前で松井が金ヘル」
「こっちは落車でパァ」
 川口は一旦先頭に立った池田政和が後続車に接触され落車。後を追う絶好調・田中茂がSG3連覇を飾った。Tは池田命!のオートファンなのである。

 そして、こちらの舟券は…松井のアタマからごっそり買っていたものの、さすがに坪井−瓜生の2・3着はなかった。たぶんこれは、松井アタマの中でも最高配当だ。
 一年で最も忙しい一日が終わった。帰路、伊丹空港での待ち時間に本日の収支を計算してみる。有馬で勝ち、住之江・川口でヤラれ、旅費を合わせると…プラス2万あまり。充実した一日だったとも言えるが、やはりせわしないというか、各勝負に集中したかった、という気持ちは残る。来年…は、もう日程が決まっているのだろうが、せめて再来年からは年末各競技の日程を考え直していただけないだろうか。こうして健気に全競技打っている客もいるのですよ…。

私の提案する12月の理想的開催日程。

第2日曜:賞金王決定戦
第3日曜:ばんえい記念
第4日曜:有馬記念
29日:東京大賞典
30日:競輪グランプリ
31日:SS王座決定戦

 これなら! 1戦1戦余裕を持って臨め、もちろん金額的にもドカンとブチこみますとも!たぶん売上げにも繋がると思うのだが。再来年度以降の日程を決める際にはぜひご検討を。

(2007年2月5日号)


筆者●沢ともゆき プロフィール

昭和40年代前半生まれ、東京下町在住。造り酒屋の家系に育ち、放蕩な青春期を送る。20代より公営全競技を最大の趣味とし、現在も本業(編集・デザイン事務所主宰)のかたわら全国レース場を渡り歩く。昨年より公営競技ライターとしてデビュー。座右の銘は『人生は種銭稼ぎ』。

『公営レース賛成派』 <http://www.sanseiha.net/>
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