【 コラム colum 】

公営レース賛成派
〜客 席 か ら 本 音 で 語 る 公 営 競 技 〜


公営競技ライター 沢 ともゆき

vol.18 「ルーキー予想屋くん達と語る公営競技座談会・前編」


若者客が減って久しい業界。場内の予想屋さんにも高齢化の波が…と思いきや、
埼玉の2場で時を同じくして予想屋デビューをした若者2名!


 レース場内の顔、というものに「予想屋さん」が挙げられる。日々レースを見続け、場内の雰囲気を肌で感じ、ベテラン客にも初心者客にとっても良きアニキ的存在(であって欲しいのだが)の彼ら。新規客にリピーター化していただくためにも、アドバイザーとしての彼らの存在は重要だ。それにしても最近ではちょっと高齢化が…と思っていた矢先、埼玉の大宮競輪、川口オートで共に昨秋にデビューした若き予想屋さんがいるというではないか。早速場内に赴いてコンタクトを取り、今回の座談会となった。予想台の上から見た公営競技の現況と予想業の実態について大いに語ってもらおう。

沢:では、それぞれの競技歴と、なぜ予想屋になろうかと思ったのかを。
(川口「ジェット社」西田氏。以下西自分は中三からだから、だいたい15年くらいですね。親父も予想屋で。その頃から競技は見ていましたね。で、親父が一回倒れたんですよ、身体を壊して。その時、ちょっと手伝って「あ、面白いな」と。
沢:昔だと予想屋さんの台を開業するとなったら、権利金とかあるでしょ? 競輪の場合だと、誰かの弟子についたりしなきゃいけないっていう話も聞くけどオートの場合はどう?
西:オートの場合は今は権利金って言うのはないですね。場所代で一日いくら、っていうのはありますが。レース場によって金額は違うようですが。
沢:競輪の場合は?
(大宮「猛牛」江坂氏。以下競輪はもっとお金がかかりますね。権利金もありますし、場所代がオートと額が違いますね。あと、G1がない時で場外だといくら、とかがあります。
沢:じゃあ、猛牛君は権利金やら何やらを…。
江:払いました。親に借りたりしてなんとか。
沢:返せる自信はある?
江:どうでしょうね(笑)。
沢:競輪に触れたきっかけは?
江:中学校一年の時に、たまたま友達の家に行ったら立川のグランプリシリーズをやっていたんですよ。で、そこの親父さんが競輪をやってて、ちょうどそれが太田真一が勝った時で、ハマりましたね。それからテレビ埼玉で大宮競輪を見たり。

沢:実際プロになって大変だな、っていうことは? 猛牛君は素人の頃からメールマガジンで予想を書いていたらしいけど。
江:趣味としてやってるものと仕事としてやっているものはやっぱり違いますね。
沢:百円もらってるからね。
西:そうですね。
沢:素人考えなんだけれども、プロとしてやると純粋な予想よりも若干エンターテイメント的なものも意識するのかな、と。
西:まぁ、それはありますよね。
沢:猛牛君なんかは声の大きさはそんなにないけど、ずーと淡々と喋っているよね。
西:ずーと話してるんですか?
沢:そう。次レースの番組表とかを貼っている最中に、後ろに誰もいなくても結構喋ってる。
西:今の予想屋は喋ってないとダメですよね。
沢:俺が思うに、昔からいる予想屋さんってのは初心者のお客さんとっては結構とっつきづらい。ちょっと恐そうだし、あと合間で常連のお客さんと話したりして、初心者が入り込みづらかったり。本当はそんなんじゃいけないと思うんだけど。その点、2人はこれからどういう風にやっていこうと?
西:自分がしているのは、とりあえずレース展開を説明をするんですよ。こいつは昨日これだけのタイムを出しているから、当然一番人気だよねって言う感じで。で、合間にこいつは面白いっていう話をして、全体で穴はこの辺が面白いよって言って、最後に予想紙をあげるっていう感じですね。レースの説明をして見やすくするようにはしていますね。
江:レース展開と、あと新人選手なら学校時代の戦歴、今で言うなら88期以降の選手のダッシュ力とかそういう特徴を伝えるようにしてますね。あと、旅打ちに行った時に見ていた選手の状況とかも予想ファクターに入れてますね。


猛 牛 (大宮競輪)
★営業場所:バックスタンド1F中央 ★最近快心の的中レース 2月12日・静岡7R:3連単123,510円
「休みの日はほとんど旅打ちです。まぁ、好きだからですけど(笑)」と江坂氏。

沢:俺も全国を旅打ちしてるけど、予想屋さんでいえば関西の場の方がみんなフレンドリーで初心者も接しやすい感じになってたね。逆に関東はとっつきづらいよ。なんでなんだろうね?
西:自分としては、専門用語を使わないようにしてますね。専門用語は職業を始める前に一応、全部覚えましたけど、まぁ『まくり』ぐらいは使いますけど、その場合も外コースからするパターンとか、噛み砕いて分かりやすく使うようにしてますけどね。常連さんと一対一で話す時は使いますけど、レース展開を説明する時は使わないようにしてますね。
沢:それは大事だよね。実際、周りの予想屋さんの意識ってどうでしょう?
西:川口の場合は、ちゃんとレース展開を説明する人と、ただずーっと座っている人とがいるんですよね、やっぱり。まぁ、ビジネスの世界だから予想を書いて当てればいいや、って感じなのかもしれません。
江:大宮でも同じように、わーわー喋る人と黙っている人といますよね。
沢:一部予想屋さんのあのダミ声もすごいよね。アメ横声というか(笑)。
西:でも、普通に喋る時はそういう声じゃないんですよ。
沢:やっぱ作ってるんだ(笑)。
西:よく通る声ってなると、ああいう感じになっちゃいますよね、やっぱり。でも、あの方が活気があってお客さんも喜ぶと思いますよ。


第二のんちゃん ジェット社 (川口オート)
★営業場所:3〜4コーナースタンド1F ★最近快心の的中レース 1月20日・伊勢崎12R:3連単190,600円
「予想通りにレースが動いた時の快感でこの稼業にハマりましたね」と西田氏。

沢:競輪、オートって他のレジャーと比べてハッキリ言って客層が悪いじゃない。それが世間的なイメージ悪にもつながっているわけで。でも、台に立ってみると、ガラの悪そうなオヤジさんでも、話してみると別にそんな悪い人間じゃないでしょ?
西:そうですね。でも、初心者の人はそうじゃないですからね。パッと見で判断しますよね。
沢:まぁ、相変わらず窓口とかで悪態三昧のお客もいるしね。最近各地で施行さんと話をする時には言うんだけど、暴言や素行が悪すぎると退場していただきます、っていう感じのビラを場内に貼っちゃえばいいと思うんだよね。今のままだと確かに新規の客は引いちゃう。まぁ、公営競技の客も十年前に比べると大人しくなったよね。
西:昔はトラックにビンを投げる人とかもいたらしいですね。
江:競輪もバンクに油まいた奴がいましたね。
沢:大人しくなった原因が高齢化、っていうのは嬉しいんだか悲しいんだか、だけど(笑)。

沢:予想屋やってて辛い事は?
西:やっぱり当たらない時ですね。全然当たらない日は本当、家に帰りたくなりますよ。
沢:スランプの原因って何だろ。
西:例えば、予想屋だけど好きな選手は多少ヒイキしちゃいますよね。その選手が不調の時はやっぱりこっちも連動して当たらなかったり。
沢:それは客もある。猛牛君も大当たり連発の翌日が全然ダメだったりとかあるよね。
江:ありますね。当たりまくった次の日ってダメですよね。
沢:むしろ客的には、前日ダメだった予想屋を狙えばいいのか。
西:たぶん、それはいいかもしれないですよ。絶対、当てられる限界の数ってあると思いますよ(笑)。   
(以下次号)

(2007年3月20日号)


筆者●沢ともゆき プロフィール

昭和40年代前半生まれ、東京下町在住。造り酒屋の家系に育ち、放蕩な青春期を送る。20代より公営全競技を最大の趣味とし、現在も本業(編集・デザイン事務所主宰)のかたわら全国レース場を渡り歩く。昨年より公営競技ライターとしてデビュー。座右の銘は『人生は種銭稼ぎ』。

『公営レース賛成派』 <http://www.sanseiha.net/>
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