【 コラム colum 】

公営レース賛成派
〜客 席 か ら 本 音 で 語 る 公 営 競 技 〜


公営競技ライター 沢 ともゆき

vol.20 「オートレース場大改革! 〜山陽・船橋取材記」


昨年来急激に進むレース場の民間委託化。
いよいよ具体的なリニューアル方策に動き出した
日本トーター社運営のオート2場を見て参りました。


 特に去年あたりから、全国のレース場で(包括的)民間委託化が続々と進んでいる昨今である。当初「民間委託」という言葉を聞いた時には「民間企業の活力とセンスをもってレース場がどんどん変わっていくのだな」と、興味と期待半々で考えていた。それがいざフタを開けてみると、例えば私のホームグラウンドである船橋オートでは今まで最もお客が集まっていた山側スタンドが丸ごと廃止となり、正門入ってすぐ、テント下の食堂(ラーメンが美味い!)も海側へ移動をさせられた。予想屋さんの台も減り、場内は寂しくなる一方。なにか「このままなくなってしまうんじゃ」という危機感とともに、行っても寂しい気分になるからと、昨年後半以降は自然と足が遠のいていた(やはりレース場は賑わいの場。客離れの一番の原因は「斜陽の空気」だと思う。全国レース場の皆さん、たとえ売上げは下がっても、場内の雰囲気まで寂しくしないようにご配慮を)。

 そんな2月上旬、オート3場 の運営受託業者である「日本トーター梶vさんからご連絡をいただいた。「山陽オートのリニューアル開催を観に来ていただけませんか」とのこと。2月の開催から運営委託になることは知っていたものの、以前の船橋のこともあり、正直大して期待はしていなかったのである。それが電話口で話を聞くと「外観全面リニューアル」「オートレース初の在席投票導入」と、興味引かれる内容が。それなら自腹でも旅打ちがてら行きたいぞ。「ぜひお邪魔させてください!」


リニューアル山陽オートの外観。列車からも見える。

 その2月17日(土)は残念ながら雨模様。それでも雨レースの面白さならオート6場随一(私見)の山陽ですから。まぁいいでしょう。朝一番の飛行機で山口宇部空港まで飛び、バス・JRを乗り継いで山陽本線・埴生駅に到着。駅を出てぱっと前を見ると…おおおお、確かにリニューアルされている。外壁はオレンジ・クリーム基調に鮮やかに塗り替えられ、どんよりした雨雲の中でも十分に映える「明るいレジャー施設」の雰囲気。名物の駅前から伸びる専用通路も同じく新塗装が施され、早く場内に行きたい!打ちたい!」と思わせてくれる(我ながら単純だ・笑)。

 場内に入ると、まだ1R前だというのにかなりの客がおり、特観席は開門とほぼ同時に完売。いくら土曜とはいえ、雨の山陽でこの客の入りにもちょっとびっくり。地元を中心にかなりのPRを行い、TVバラエティ番組などでも幾度か紹介されたということで、行き届いた宣伝をすれば、まだまだ地元にオート客はいる、と実感。メインの在席投票席に入ろうと特観席に上がると、特観スペース全域が改築されており、特に目立つのは各席のスペースの広さ。このゆったり感は「特別観覧席」の名に恥じないものであると十分おススメできる(全国には「これが特観?」というところもまだまだあるのでねぇ)。


これがオート界初導入の在席投票システム画面だ! どの賭式もオッズを見ながら指先一本で投票可能

 問題の在席投票は、「eスマート倶楽部」なる会員証を作成し、そこに場内の窓口で入金。席備え付けの読み取り機にこれをかざして投票した分だけ引かれてゆくというシステム(入会時に個人情報を書かなければいけないのはちょっと、という意見もあるが)だ。各座席に設置されているモニターがタッチパネル方式になっており、ワンタッチでポンポンと購入……ああっ、そういえば前にも書いた桐生競艇の『ムーヴ&ウィン』では気軽に買いすぎて大負けしたんだっけ。気をつけねば…と思いつつそこはギャンブラーの悲しい性。この日も前半で作ったちょっとした儲けを後半使い果たし、次々と追加入金。結局「ポンポンポンでオケラ」となったのでした。とほほ。これからの時代、この手のシステムにおける打ち方と心構えをきちんと作っておく必要があるな(悲)。

 その後、3月上旬に船橋オートへも久々に訪問。こちらも改築真っ最中で、正門周辺は工事用鉄板で覆われていた。担当者に話を伺うと、4月11日のリニューアル開催に向け進行中とのこと。従来の正門の位置を2コーナーあたりまで移し、そこまで無料バスも引き込むらしい。これにより客席はほぼ海側だけとなり、発券窓口の体制も完成。行ってみると、1コーナーから海側メインスタンドにかけてはかなりの客密集度で賑わっており、ここだけ見れば「船橋に活気が戻った!?」と、ちょっと嬉しい気持ちにも。確かに規模縮小の結果ではあるが、今後は場によってはこの手の極端な施策も必要だろう。何より「寂しい」のが一番イケナイのだから。


船橋の新装オープン(4/11)も楽しみ 

同社は新年度以降、競輪場の運営にも着手。「レース場を盛り上げる」手腕に期待したい。

(2007年4月20日号)


筆者●沢ともゆき プロフィール

昭和40年代前半生まれ、東京下町在住。造り酒屋の家系に育ち、放蕩な青春期を送る。20代より公営全競技を最大の趣味とし、現在も本業(編集・デザイン事務所主宰)のかたわら全国レース場を渡り歩く。昨年より公営競技ライターとしてデビュー。座右の銘は『人生は種銭稼ぎ』。

『公営レース賛成派』 <http://www.sanseiha.net/>
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