【 コラム colum 】

公営レース賛成派
〜客 席 か ら 本 音 で 語 る 公 営 競 技 〜


公営競技ライター 沢 ともゆき

vol.24 「注目率ナンバーワン! 岸和田BBスタジオ」


今や観戦メディアの中心となりつつあるネットライブにおいてほぼ独占ともいえる
注目率を誇る「岸和田BB」の魅力と戦略を取材、のご報告


 前号で記してすぐ、方々から数々の反響をいただいた『いわき平競輪・全プロバスツアー』。「今度はいつやるのですか?」といったお問い合わせが多いものの、今回主催をされた女性達は、やはり相当お疲れだったようで「もう次は考えていません」とのこと。同時に「できればこの熱気を絶やさぬよう、誰かに引き継いでもらいたい」との意思も示され、それならと私を含むツアー参加者数名が音頭を取り、6月中に首都圏某場にて観戦会を企画。その結果はいずれ誌上にて報告いたします。
 他にもこうした観戦会等の企画をお考えの関係者の方は、本誌編集部を通してぜひご連絡を。盛り上げていきましょう!

 さて、こうした「アナログ」な集客戦略に対して、デジタルの方はといえば『岸和田BB』なのである。唐突で申し訳ないが、とにかく先日日自振から発表された競輪ファンアンケートの結果を見て驚いた。「主にどこの競輪場のインターネットライブ中継をご覧になっていますか?」の問いに対し、回答のじつに4割強が「岸和田」。棒グラフで見るとその注目率・独占率はダントツである。私自身もよく視聴しているこのネット放送。他場との比較で優れているのは
●本場開催日のみならず、場外発売の記念レースをはじめほぼ1年中配信
●専用スタジオ(場内の客が行き交う前!)を設け、競輪実況アナたちが独自予想をしながらレース解説をする 
という点。従来のオッズとレース実況だけの中継放送とは一線を画した「競輪バラエティ番組」といえるものである。
 5月下旬、記念競輪に湧く岸和田競輪場へ、噂のスタジオを拝見しに伺った。


場内に設けられた放送ブースはさながら街中のミニFM放送局のよう。
解説・予想が始まると周囲にお客が集まりだし、中にはガラス越しにキャスターとやりとりをする方もしばしば

 記念最終日のこの日は五月晴れの好天。入場門を入って右側にイベントステージ。BBスタジオのブースはその側面にあった。普段はステージ正面に向けて設営されているのだが、ブース自体が移動式となっており、イベントのある日にはこうして脇にもってくるのだそう。
 1R顔見せ前から、ブース内での放送が始まると、通りすがる客が群がりだす。中にはガラスを通してキャスター氏の予想にツッコミを入れてくる人も。話を中断し、そんな客の言葉にその都度答えを返すキャスター氏。これも斬新な形だ。「あまり無視したりすると逆に話しかけられなくなっちゃう。そのあたりのバランスが難しいです」(藤澤宏己キャスター)とのことで、これはアナウンサー(BBのキャスター陣は皆もともと競輪実況のプロの方々だ)にとっても新境地となるテクニックだろう。更に人が集まりだしてくると、これはさながら「ブース内予想屋」の様相を呈してくる。「予想が当たって、ご祝儀をいただいたこともあります(笑)」(滝口久キャスター)。これをそのまま放送に乗せるのだから、客席の臨場感を伝える、という点では最高だろう。


ブース内ではキャスター氏が3方をモニターに囲まれて予想に、お客相手のやりとりに奮闘

 終了後、BBの総プロデューサーでもある施行氏、そしてこの日場内にいらしたキャスター3名(滝口久氏、和田年弘氏、藤澤宏己氏)にお話を伺うと、そこから出てくるのは先駆者ゆえの面白さ、苦労、と様々ではあるが、中でも興味深かったのは「これだけではダメなんです」とおっしゃる点。確かに現在圧倒的なシェアを誇る状態の岸和田BBではあるが、ネット環境のないファンにとっては縁のないもの。運営側は、ともすれば「これだけネットに予算・心血ともに注いだのだから他の宣伝媒体は徐々に削ってゆこう」と考えがちだがとんでもない。岸和田ではBBを運営する一方、スピードチャンネルでの中継も従来どおり重要視し、更に関西ローカルの地上波番組まで展開している。施行氏曰く…

「広く一般にアピールする地上波。コアな車券購入層にはCSが不可欠。そして先々を見越し新規客(特に若い層)に訴えるネット放送。この3つのどれが欠けてもダメなんです」。

 確かに! しかし、とにかくカネを使え、というわけではもちろんなく、一方では場内各所での経費の切り詰めテクニックについても伺った。今まで何の疑問もなく使ってきた経費のムダを見つめ直し、切り詰め、そして放送を中心とした「まんべんない広報」に予算の中心を充てる。客の裾野を広げなければ明日のない公営競技界の現況においてはベストといえる運営だ。


BB放送のリアルタイム編集を行うパソコン。
年間340日放送のフル稼動体制にあって専任オペレーターさんはわずか2名。
徹底したコスト削減で日々の放送を維持している

 それにしても…岸和田BBの配信がスタートしてから3年余り。いまだに追随する場の出てこないのが不思議だ。予算・人材の不足が要因ではあろうが、これは場内運営・広報において大きく、かつ集約的なパワーを持つものだと断言できる。BBスタジオを中心としたネットや他媒体への広報展開。他場の皆さん、余計な経費を切り詰め、早急に考えてみませんか? ファン側としても、各場独自の予想バラエティ番組があちこちで…と想像するとかなりワクワクいたしますぞ。

(2007年6月20日号)


筆者●沢ともゆき プロフィール

昭和40年代前半生まれ、東京下町在住。造り酒屋の家系に育ち、放蕩な青春期を送る。20代より公営全競技を最大の趣味とし、現在も本業(編集・デザイン事務所主宰)のかたわら全国レース場を渡り歩く。昨年より公営競技ライターとしてデビュー。座右の銘は『人生は種銭稼ぎ』。

『公営レース賛成派』 <http://www.sanseiha.net/>
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