【 コラム colum 】

公営レース賛成派
〜客 席 か ら 本 音 で 語 る 公 営 競 技 〜


公営競技ライター 沢 ともゆき

vol.26 「レース場にお客を集めよう!〜観戦会主催してみました」


メディアでのPRも大事だが、今するべきことは「一人でも多くのお客をレース場に呼んでくること」。
それを実践すべく開催した筆者主催観戦会


 さる6月17日・日曜日。神奈川県は川崎競輪場にて、民間主催の観戦会が催された。主催したのは他でもないこのワタクシ。以前ここで記した『いわき平全プロ競輪観戦バスツアー』で客席レベルから生まれてきた熱気を絶やすまい、との思いで企画を立て、実行に移したわけである。今回はその一部始終をご報告しよう。

 コトの発端は前述の全プロツアーの思い出や事後談を語り合うブログ。この中でツアー参加者の一部の方から「またどこかの競輪場に行ってみたい」との書き込みがあり、「それなら川崎に行きませんか。これぞ競輪場、という雰囲気だし、食事も日本一レベルですよ」とレスをした私。そこで一歩進んでひらめいたのが「このままの勢いで観戦会を開こう!」だったのだ。


川崎競輪場は名実ともに「東の競輪のメッカ」。
濃い(?)客層と安くて美味い場内飲食はピカ一

 川崎専属解説者の木庭賢也氏に相談をもちかけると、全面的なご協力をいただけるとのことで、施行さん、競技会のご担当者に紹介をいただく。観戦会の趣旨や、考えている具体的内容をお伝えすると話はスムースに進み、川崎初のバックヤード(検車場)ツアーなども実施できることに。その他、施行さんからはプレゼントグッズ・場内飲食券・予想紙のご提供もいただけるとのこと。 
 そして今回ぜひとも実現させたかった「参加者の場内撮影許可」。これも各参加者の身体に目印をつけさせることでOKをいただいた。個人的には前時代の遺物と思っている「場内撮影禁止」。これが打破できただけでも大きな収穫だ。

 帰宅後、さっそく参加者の募集開始だ。観戦会の募集・情報専用ブログを立ち上げ(無料レンタルブログを使えばものの30分でできる)、まずは全プロツアーの参加者あてに一斉案内メールを送付。そして私自身のホームページでも告知をし、更に会員一千万人を誇るネット上の最大コミュニティ『ミクシィ』の競輪関連ページにも募集記事を書く。
 下見をさせていただいた川崎競輪場の観戦ルームの収容人員は最大30名。果たしてそれだけの数が集まるだろうか…?
 しかし、そんな不安は杞憂に終わった。募集開始四日目で定員に達し、募集は打ち切りとなったのである。
 ここから当日までは、参加者の興味と気持ちの盛り上がりにつながるよう、日々ブログに情報をアップ。今回斡旋の選手に関する情報から、さきに取材をした場内飲食店のメニュー情報まで。いわばこのブログがツアーパンフがわりとなるわけだ。

 当日は正門前での集合。参加者証は手首につけたフラワーアクセサリー。これにはちょっとした工夫があって、競輪経験者は青、初心者は赤と色分けがしてある。「経験者は初心者に積極的に教え、初心者は遠慮なく尋ねること」というのが今回のコンセプトの一つ。「先輩が後輩にギャンブルを教える」昭和時代の流れを復活させたい、という個人的意図だ。

 観戦室に一同が入る。まずは前述・木庭賢也氏による車券講座だ。ここでは「川崎車券講座」と銘打ち、特に川崎に特化した車券の狙い方、今回斡旋の選手全般に関する情報などを喋っていただいた。中継放送でもお馴染みの軽妙な語り口に放送では言えない裏話なども加わり、初心者・経験者ともに笑いながら聞き入っている。
 それが終わると川崎史上初! のバックヤードツアーがスタート。約10名づつ3班に別れて動き出す。先導・説明役は競技会の総務部長氏。歩きながら穏やかな口調で説明をいただき、選手が並んでローラーを踏んでいるところでは参加者一同「すごい!」と口を揃える。


解説者・木庭賢也氏による「川崎車券講座」。
放送ではちょっと言えない話もチラホラ飛び出し興味深い内容

 バックヤード終了後はフリータイム。ここからいよいよ本格的に車券を買っていただこう。
 やがてお酒や食べ物も入り、観戦ルーム内はすっかりなごやかムードに。初対面の参加者同士が予想や選手のことなどを話し合ったり、一緒に一般席へ移動して金網前で声をあげたり。もうここまでくると参加者各自が勝手に楽しんでくれるので、幹事役としてはひとまずホッとした状態。あとは、初心者にいかに「一つでも当てさせるか」。やはり一つも当たらないとねぇ、もう次回来ようという気にはならないだろうし。今回私が最もプレッシャーに感じたのは実はその点なのだ。それでも一人二人と的中者が現れ、的中者プレゼント(選手サイン入りTシャツ等)を手にしてゆく。このプレゼント品は木庭氏が直前のG1高松宮杯のロッカーで選手に声をかけ、集めてきてくれたもの。「的中車券を持ってきた方
から順にプレゼント」というルールなのだ。

 10R終了後に一旦観戦ルームに集合。最終レースは全員で一緒に観戦だ。ここでゲストとして現れたのは、全プロツアーでも素晴らしいパフォーマンスを提供してくれた立川競輪の実況アナウンサー・筒井大輔氏。この日のために仕込んだネタをふんだんに盛り込んだ面白実況で室内を沸かせる。
 最終レース終了後、正門外で解散。希望者のみの打ち上げ宴会の場も確保済みで、各自駅前の居酒屋へ向け歩き出す。打ち上げにはロッカー取材を終えた木庭氏も途中から加わり、もうひと盛り上がり。終電ぎりぎりのおひらきとなり、長くも楽しい一日が終わった。

 集客の方法論が各所で語られる昨今であるが、メディアにおけるPRがなかなか実を結びづらい現状において、私自身は今後もこのような観戦会を中心に「実際にお客を呼んでくる」方策をメインに据えて行動しようと考えている。早い話が「人を動かした者が一番エラい!」のだ。
 次回観戦会は8月下旬に首都圏某場で「更に大人数で・内容濃く」行うべくすでに準備中。決定次第、当ページや『公営レース賛成派』HP上にて発表いたしますのでお楽しみに。また、このような観戦イベントの開催を希望されるレース場関係者の方はぜひ編集部、またはHP経由でご連絡を。

(2007年7月20日号)


筆者●沢ともゆき プロフィール

昭和40年代前半生まれ、東京下町在住。造り酒屋の家系に育ち、放蕩な青春期を送る。20代より公営全競技を最大の趣味とし、現在も本業(編集・デザイン事務所主宰)のかたわら全国レース場を渡り歩く。昨年より公営競技ライターとしてデビュー。座右の銘は『人生は種銭稼ぎ』。

『公営レース賛成派』 <http://www.sanseiha.net/>
ご連絡は本誌編集部、もしくはEメール tom@sanseiha.net まで。