ライターデビューして1年余り。この間、ビッグレースから普通開催まで、様々な場のオモテとウラを見せていただいた。もちろん楽しかったこと・面白かったことも多いが、やはり斜陽産業の悲しさ。どうしても「これだからダメになるのだな」という部分ばかりが目についてしまう。人一倍のポジティブシンキングを自認する私でも、だ。
特にヒドイのはやはり平日のヒラ開催。売上・入場者数などという目に見える数字の問題以上に、斜陽の匂いというか、活気がないというか、一言で言えば「レジャー産業として終わっている」その雰囲気。この悪しき空気をなんとかする方策はないものだろうか。
近年、メディアが発達して、CS・ネットなどを中心に、毎日全国のビッグレース中継を観ることができる。これが場外や電話・ネット投票の売上向上に結びついていることは言うまでもないが、逆に地元ヒラ開催からの客離れを招いていることは間違いないだろう。ヒラ場の選手達には失礼な言い方で恐縮だがハッキリ言おう。格上のビッグレースが常に観戦可能になった今、もう普通開催は競走としては魅力がない、と客に判断されてしまっているのである。ならば、そんなヒラ開催を維持するためには「選手の魅力」で売るよう仕向けるべきではないか。
●沢の具体案・3
『ヒラ開催は選手の魅力で売るべし』
当ページでも過去に記した競輪選手会埼玉支部による一連のファンサービスなど、普通開催レベルでの選手の客席での顔見せ、お客とのふれあいイベントなどが徐々に多くなってきた昨今ではあるが、全国的にまだまだその機会は少ない。私がこれまで経験した場内イベントや観戦会などでの参加者の反応を見るに、お客が最も喜ぶのはモノを与えるような催しではなく、選手との直の触れ合い、だ。
「選手と客はなるべく接触させたくない」という施行サイドの思惑、そして「ファンサービスに駆り出されている時間などない(ましてやギャラ無しで)」という選手たちの本音をよく聞くが、施行側は競技の公正性を保てる形での選手の露出をもっと考えるべきだし、選手(特に下位の)も、地元でのファンサービスやヒラ開催に客を呼ぶためのPR行為への無償協力は、今や仕事の一部と考えるべきだろう。練習をしたい、ペラを叩きたいというのも当然だろうが、肝心の仕事場が減ったり、なくなったりする危機なのだから。
平和島競艇HPの「東京ベイパイレーツ」。
地元所属のイケメン選手をチーム化してアピール。
http://www.heiwajima.gr.jp/
ファンイベントを通じて地元選手一人あたり20〜30人以上のファンをつけることを目標にしたい。その選手たちが斡旋されている地元開催では、それだけでどれほどの集客増になることか。客側からしても、知っている選手が出る開催には足を運びたいものだし、好きな選手で取ったりした日には、嬉しくて一層ハマろうというものだ。選手自身にも、もちろん励みになるだろう。
場のホームページなども、もう訳のわからないキャラクターなどをトップに据えるのは止め、地元選手をばんばん出して行きましょう。最近では平和島競艇の『東京ベイパイレーツ』。あれはイイ! 競輪でも福島選手会による選手ブログ集『いわき平の風』などは、選手と客の距離をぐっと近づけるものだ。
競輪・福島選手会による選手ブログ「いわき平の風」。
この日は落車後の岡部芳幸選手の近況が掲載。
http://blogblog111.blog.ocn.ne.jp/keirin_main/
こういった意識を全国・全競技に一刻も早く浸透させないと、公営競技を今のままの規模で残すことはまず不可能、というのがこの1年間での一つの結論である。
ファンサービスに対する意識にも競技・地域により非常に温度差があり、特に現在まだ売上にそれほど危機感を抱いていない競技(何とは言わないが)・地域(どことは言わないが)の選手・関係者にこの類の話をしても「何もそこまで…」という反応が返ってくることが多い。しかし、よく考えてみてほしい。昭和から平成に変わる頃、売上が最も上がっていた時期に、この類のことを一切考えず、実行もしなかったから、現在ここまで落ちてしまったのだということを。ファンサービスに「やりすぎ」「早すぎ」はない。
そして…「やりすぎ」はないが「勘違い」なイベントはある。
●沢の具体案・4
『客席に物を投げるな!』
いま、最も多く見る「選手がタオルやらTシャツやらラッキーボールやらを客席に投げ入れるようなイベント。あれ、いい加減止めませんか? その付近にいる一部のお客に対してだけのPRにしかならないし、何より下品な匂いしかしない。選手が「ほらよ」とばかりに放り投げ、それを奪い合う客…(私はとてもあの輪の中には加われない。恥だ)。初心者を連れていった際に「ほら、レース場って思ったほどヒドイ所じゃないでしょ」と啓蒙している脇であの奪い合い…。台無しである。選手からお客へプレゼント、ということなら、もっといくらでも方法はあると思うのだが。
(2007年8月5日号)
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