【 コラム colum 】

公営レース賛成派
〜客 席 か ら 本 音 で 語 る 公 営 競 技 〜


公営競技ライター 沢 ともゆき

vol.29 「デビュー1周年の提言・その3」


残暑お見舞い申し上げます。暑さにイライラするあまりいつもより更に辛口口調でぶちまける、
公営競技活性化への提言集第3弾。


 これを書いているのはお盆真っ最中の8月14日。とにかく暑い! 「公営競技ライター」としては、各レース場のお盆開催に足を運んで場内の様子などを観察しつつ、売上貢献にもといかねばならないところだが、冷房の効いた仕事場でCS中継は見られ、ネット投票環境も整っている…とあっては、この暑い中を本場へ向かう意欲は減退するばかり。 
 仕事場・自宅のある東京都台東区・墨田区界隈からで考えると、行ってもいいかな? と思えるのは一般席でも空調完備の戸田競艇ぐらい。それでも往復の徒歩・電車で汗だくになることを考えるとやはりためらってしまうわけで「最寄の駅から直行無料バス(もちろん帰路も運行)で空調完備のレース場へ」ぐらいの贅沢を叶えていただかないことには実際行く気はしない。 
 一旦ぬるま湯(在宅投票)に浸かってしまった客は、かようにワガママなのである。もちろん暑い一般席が当たり前の競輪場・オートレース場なんかには絶対行きませんとも。「特観に入ればいいじゃない」と言われようが、交通費プラス特観で2〜3千円もかかってしまうぐらいなら、やっぱり家で打ちますって。あと、以前にも書いたが、この時期それでも頑張ってレース場に行くと、券を買うべく穴場(投票所)に手を突っ込んだ時に「ひんやり」する(中の職員スペースだけ冷房がガンガン効いている)わけだが、あれは本当に頭に来る! あのイヤな思いをしたくない、というのも真夏のレース場に行かない一因なのだ。

●沢の具体案・5
『本場活性化にはまず快適な観戦スタンド、そして交通アクセスの充実を』

 ここ数年全国で、経費削減の有力手段として「無料バスの廃止・削減」が進んでいるわけだが、これこそまさに本末転倒といえるだろう。アシをなくしておいて活性化・集客増もないもんだ、と客席では皆ブツブツ言っております。
 公営競技の活性化にはネット投票よりやはり本場にお客を呼ばねば(客単価自体本場の方が高いわけだし)、とは各所で言われるが、それならば余計この点をしっかり考え直していただきたい。


無料ファンバスは本場活性化への大切なツール。
経費削減策による廃止・減便は大反対!

 さて、話は変わって。
 先日の艇王・植木通彦選手の電撃引退でよく言われるのが、フライングの罰則としてのあっせん停止について。植木選手本人は「総理杯優勝戦のフライングと今回の引退は関係ない」とのコメントだったが、引退要因の一つになっていることは想像に難くない。常にSG・G1の最前線を走る選手が1年間ヒラ開催回り…いくら精神的にしっかりした選手でもモチベーションを低下させるなというほうが無理だろう。
 競輪でも、失格をしたり違反点が重なったりすると一定期間のあっせん停止となっているわけだが、現状において「走らせない」というのを罰として課すことが正しいのかどうか? 
 私的結論からいえば、あっせん停止よりも罰金などを課すほうが良いと考える。選手にとっては罰金を取られるのも休みで稼げなくなるのも金銭的負担という点で一緒だが、客側にとっては違う。その選手にまつわる予想をする場合、罰則休後の復帰戦を走る選手の「久々でレース勘が戻っているかどうか」という予想はしづらいが、罰金を取られた選手の「稼ぎ直さないといけないから気合入っているだろう」というのはむしろ予想に役立つデータとなり得る。もちろん予想紙や選手データには各選手の今年度賞金・生涯獲得賞金と一緒に「今年度罰金・生涯罰金」を記すことは言うまでもない。


競艇オフィシャルHPに掲載された艇王・植木の引退会見。
これを機に罰則制度の再考を

●沢の具体案・6
『反則・失格の罰則は金で』

 前回も書いた「これからの公営競技は選手の魅力で売ってゆくべき」という方向性を推し進めるにしてもこれは重要。スター選手の戦線離脱は客側にとってもレースへの興味を失わせるし、それならば選手には走っていただき、レースで罰金分を取り戻してもらう、と。選手=賞金稼ぎという単純な図式に立ち返れば、このほうが選手にも客にもわかりやすい「美しい」形といえるのではないだろうか。
 もちろん反則を奨励するわけではないが、「反則しまくってもその分勝って稼ぎ返す」なんていうワイルドな選手がいてもいいような気はする(あっ、奨励してますかね)。
 あっせん停止は選手にとって確かに収入的には痛いかもしれないが、精神的にはそれほどこたえているとは思えない。罰則休前の選手と話をすると「1ヶ月休みなんで、ちょっと家族で海外にでも♪」なんてのが結構いるしね(苦笑)。罰則が骨休み代わりになっていては意味がない、ということだ。
 骨休み期間は罰ではなく、むしろご褒美として(有給休暇のような形で)与えるべきであって、来年から実施される競輪・S級S班選手に与えられる年一度の長休などは、選手自身どう使うのか、注目だ。

(2007年9月5日号)


筆者●沢ともゆき プロフィール

昭和40年代前半生まれ、東京下町在住。造り酒屋の家系に育ち、放蕩な青春期を送る。20代より公営全競技を最大の趣味とし、現在も本業(編集・デザイン事務所主宰)のかたわら全国レース場を渡り歩く。昨年より公営競技ライターとしてデビュー。座右の銘は『人生は種銭稼ぎ』。

『公営レース賛成派』 <http://www.sanseiha.net/>
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