それにしても、連日TVで映る「世界陸上」のスタンドの閑散ぶりはヒドい。一瞬どこかの公営競技場かと思いましたよ、あたしゃ。競技・記録が優先で集客は二の次。全世界に向けてはTVで放映しているんだからいいや、という考えなのだろうが、全世界に向けてあのガラガラのスタンドを見せるのは、それはそれで恥のような気もする。こんなことじゃ陸上競技に熱狂は生まれまい。公営競技でいえば近いのは小倉ナイター競輪の中継かな。客を入れないことにしたバック側スタンド(つまり客ゼロ)がレース中始終映るわけだが、これがえもいわれぬ寂しさを醸し出す。TVに映るんだから、なにがしかの装飾をするなり考えるべきでは? あれじゃ世に向けて競輪の斜陽化を宣伝しているようなものだ。
逆に、集客数・売り上げ共に、公営競技界では奇跡ともいえる右肩上がりを続けているのが長崎県・大村競艇だ。まずその数字を見てみよう。
【集客数】
●16年度:対前年比+15.4%
●17年度:同 +4.0%
【利用者数】
●16年度:対前年比+83.1%
●17年度:同 +1.1%
【一日平均売上】
●16年度:対前年比+52.9%
●17年度:同 −7.0%
となっている。ともかく16年度の飛躍的な伸びは異常ともいえるほどで、これは15年度に策定した再建計画を16年度から実施した結果とか。初年度からこれだけ結果が出たのだから、いかに正鵠を得た計画であったかということか。
その計画の主な中身は…
●人件費を中心に経費徹底削減
→323人の従事員を198人に
●ファンサービス経費と広告宣伝費は逆に上乗せ
→ファンサービス費76%増、広告宣伝費は2倍以上に
●スタンドリニューアル、場内飲食の充実
●場外発売拡大、専用場外(ボートピア)新設
と、見てみればそれほど目新しいことはないのだが、それぞれの施策を実行するにあたってのフットワークとセンスが良かったのだろうな、と思う。確かに大村といえばここ数年、全国のファンに向けての新サービス(特に今回の「大村マイル」には感動した。思わず入会しました)も多く、また開催的にも各種企画を盛り込んだものを多く展開するなど、さながら「競艇界の知恵袋」的なイメージが定着した感もある。
そして、広告宣伝費を倍に、というのが目を引く。やっぱり他レジャーに負けない広報でしょ。特に地方の場においては、一度徹底した地元向け広報を展開し、「その地域で一番のレジャー施設」にしてしまえば、若い世代も参入してくるし、安定した売上が望めるようになるだろうと思う。
唯一気になるのは、集客は増えているのに一日平均売上が下降気味な点で、これは「客単価が下がっている」ということに他ならない。これは第二段階の広報宣伝をするべき時期に来ていることを意味する。つまり「ギャンブル的広報」だ。とりあえず客は集まるようになった。次にすべきは「イメージを損なわないよう最大限気を遣いつつ・舟券をより買わせる方向へ」PRするということ。早い話が「射幸心のくすぐり方」を重点に方策を練ることだろう。北海道のばんえい競馬でも、今年から運営を行っている大企業の力により集客はアップしたものの、売上は下がっている。実際行われていることを見聞きすると、やはり人を集めるところで終わってしまっているような部分が多い。内部に「ギャンブルを売る」考えとセンスのある人材が必要に思えてならない。ハッキリ言わせていただけば、「観光」ではギャンブルの売上は上がらないのだ。
「イメージを保ちつつ射幸心をくすぐる」。その具体的な方策について、私自身は周囲とも常に考えているが、総括して言えばレース場を「楽しい・ギャンブルな場」としてPRするということ。古き悪しき時代の「ギャンブル=ダーティー」な空気を感じさせない表現方法を吟味した上で、ポスター作るならレースや投票券・現金などの絵柄を片隅にでも挿入するべきだし、TVで宣伝するならイメージ的な内容や選手の素顔的な企画ばかりではなく、有名人・タレントなどが券を買ってワイワイ楽しんでいるところを流すべきだし、場内イベントやるならゲストには必ず券を買わせ、当たった外れたの喜怒哀楽を見せる……つまりはそういうことだ。良い意味で「ココは賭け事で楽しく遊べる場所なんですよー」とPRする。それが成功すれば人も集まり、券も売れる。
このあたりは、今後機会が与えられれば施行者・運営者の方々と共に練り上げてゆきたいと思っている。確かに一番難しいことではあるのだが、この具体的方法論が出来上がり実行に移すことができれば、大村だけでなく公営競技界全体に大きな光明となるだろう。施行・運営サイドの方々は、まずは大村競艇の近年の集客売上アップ策を大いに参考にしつつ、同時に第2段階としての広報戦略「ソフトに射幸心を煽る」を考えてゆくのが良いと思う。
大村競艇HPにある「マイルクラブ大村24」の記事。飛行機よろしく、舟券購入でマイルが溜まる!
(2007年9月20日号)
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