【 コラム colum 】

公営レース賛成派
〜客 席 か ら 本 音 で 語 る 公 営 競 技 〜


公営競技ライター 沢 ともゆき

最終回 「レース場への誘い文句を考える」


公営競技への客席からの提言を続けてきた当コラムもこれが最終回。
素晴らしき公営競技を衰退させないために読者諸氏のご協力を願う! 


 突然ではありますが、当連載、今回をもって最終回でございます。筆を置く理由としては、もう『賛成派』としての業界への提言めいたことは書き尽くしたな、ということ。
 振り返ってみれば、現在までの業界の広報・運営などについて否定的見解を繰り返してきたわけでありますが、私、元来がポジティヴな人間なもので、今後はできれば公営競技の楽しい・明るい面を中心に物を書いてゆきたいというのも正直な気持ち。ここまで書いてきた提言・苦言は本誌とともに残るかとは思うので、業界関係者の方々、読者の皆さんの心の片隅にでも置いていただければ幸いです。

 さて、ここ数年前ぐらいから心ある実況アナウンサーの口からも「ぜひお友達を誘ってレース場へ」といったようなコメントが聞かれるが、とにかく入場者減少が続く昨今、速攻で一人でも多くの客をレース場へ連れてこなければならない。
 以前にも書いたが、昔は職場で先輩が後輩を誘ってレース場へ来た。それが新規客をコンスタントに増やす流れになっていたわけだが、社会での人間関係が薄くなった昨今ではもうそれは期待できない。となると、現在自ら好きでレース場に通っている我々が、積極的に友人や一族郎党までを引っ張ってゆくのが確実かつ手っ取り早い手段となる。そこで最終回の今回は主に読者の皆さんと、周囲のギャンブルをしない人間をいかにしてレース場へ誘うかを考えてみたい。

 まず最初に考えたいのは、そういった「公営レースをしない方々」は、「ギャンブルが根っからキライ・全く興味を持たない人」と「別にキライではないが公営に関しては触れる機会がなかった人」の二つに大別できる。前者はちょっとやそっとの誘いや説得ではなかなかオチないし、あまり強引に勧誘をすると人間関係にヒビが入ってしまう恐れもある(私も経験アリ・苦笑)。ならば後者を集中的にあたってみよう。レース場には行ったことがなくても、普段からパチンコはやる、ジャンボ宝くじは毎回買っている、「ロト6がキャリーオーバーでン億円!」という新聞記事を見ると色めきたつ、というような友人が狙い目だ。これはアナタの回りにもたくさんいるだろう。では、具体的誘い文句としてはどのような感じが理想なのか?
 これを書くにあたって、私の周囲のギャンブル好き数名に、今までの勧誘経験談を聞いてみた。

●A氏の場合:職場にて
A「Bさん、競輪行きません?」
B「競輪って儲かるの?」
A「俺は今のところプラスだね。百円が85万になったこともあるよ」
B「凄い! じゃ行ってみる」

 とにかく「儲け」の可能性をクローズアップさせて興味を引く好例。宝クジで3億当たるよりも、公営で百円が85万になる確率の方がよっぽど高いはずではあるし。

●C氏の場合:後輩に誘われた
「Cさん、ちょっと変わったビアガーデンに行きませんか?」

 酒や飲食で誘う。他にも女性同士で「天ぷら食べに行かない?」というようなのもあった。一番手軽な誘い方だが、実際行って見て食べ物がマズくては話にならない。こういうお客もいるのだから、レース場内飲食は絶対に他レジャーに負けてはならぬ。

●D氏は語る
「ナイター開催だと誘いやすい。キレイなイルミネーションとか見ながらお酒飲もうよ、と連れていったことはあります」

 よっ、遊び人! しかし、こういう使い方をしていただけるのは今後の業界としては非常に有難いこと。ナイター開催場では、場内にデート用のスペースを設置するのがいいかも。

 その他にも「ストレス発散しに行かない?」「真剣勝負を見に行かない?」などといった実例が寄せられたが、せっかくこれらの誘い文句を駆使しても、実態が伴わなくてはお話にならない。「エキサイトした競争が観られ」「食べ物が美味しく」「射幸心を刺激される」場所でなくては、例え心あるお客が新しい友達を連れてきたとしても、それをつなぎとめておくことはできない。

 最後は結局、提言調になってしまうが、ここ数回観戦会などを主催してみて感じたことを記そう。私の目から見た(特に初心者の)お客が喜び、競技に更に興味を持つ要素となり得るのは
●選手との触れ合い 
●エンターテイメントで話せる指南役 
●場内施設(飲食含む)
がベスト3。これがハイレベルで揃えば、ただでさえ面白いレースギャンブルのこと、かなりのリピーターを呼び込めるであろうことを確信している次第。まぁ、それには公営レースに愛を持った人材を内外から広く求め・育てることが急務といえるだろう。
 私自身、今後も場内外イベントの主催や媒体PRの動きを一層強くし、公営競技を盛り上げてゆくことを生業としてゆくつもりである。本誌でもまた違った形でこのレジャーの楽しさをお伝えすることができればと思う。これまで一年半、ご愛読いただき有難うございました!


公営レース場を他レジャーと同等の意識で見させることこそが現在の最重要課題だ。

(2007年11月5日号)


筆者●沢ともゆき プロフィール

昭和40年代前半生まれ、東京下町在住。造り酒屋の家系に育ち、放蕩な青春期を送る。20代より公営全競技を最大の趣味とし、現在も本業(編集・デザイン事務所主宰)のかたわら全国レース場を渡り歩く。昨年より公営競技ライターとしてデビュー。座右の銘は『人生は種銭稼ぎ』。

『公営レース賛成派』 <http://www.sanseiha.net/>
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