「終わりなき戦い」はアメリカのジョー・ホルドマンのSF小説です。宇宙戦争が起こり地球に帰る度に時空のずれで浦島効果によって数十年が経過し家族や知人が次々と世を去り、地球の社会や言語も大きく変容していく内容です。「猿の惑星」も時空のずれの作用もあり地球に居ることを知らなかった主人公が海岸で自由の女神を発見して愕然とするシーンが有りますね。

　今、世界中を震撼させている新型コロナウイルス感染は人類が経験したことのない苦しみを与えています。病に苦しみ、感染の恐怖、経済では人々の生活を脅かしています。

　2020年は東京オリンピック開催ということで盛り上がっていた日本ですが、2020年開催を断念し1年延期しました。7月24日は東京オリンピックの華々しい開会式の予定でしたが世間ではコロナウイルス感染の第二波の話題が多くを占めました。しかし夜8時になると「はじまりの花火」が全国121か所で一斉に打ち上げられ夜空を彩りました。

　私はテレビで見ましたが、美しいはずの花火が打ち上げられるごとに、現状の何かが頭
に浮かび心底綺麗だったと思う感覚がありませんでした。

　現在、全世界で治療薬、ワクチンの開発が進んでいるようですが、人々はここ数ヶ月もがき苦しんでいます。私は時間や月日が数ヶ月空白になり、こういう感覚が時空のずれと同じではないかと感じました。現状は終わりなき戦いの様相です。早く治療薬、ワクチンの開発が進みこれまでの生活に戻りたいものです。

　コロナウイルスといえば国民的人気を誇ったタレントの志村けんさんが新型コロナウイルスによる肺炎のため亡くなりました。私は現役の頃に志村さんと交流があった中野浩一さんに誘われて数名での食事会でご一緒させてもらったことがあります。私が「週刊誌に掲載された運転手付きの大型リムジンに志村さんが乗っていた姿が格好良かったですね」と話しかけると、「はい、あっそうですか…」と返答し、その後も物静かにみんなの会話を聞き役にまわりお酒を飲んでいたのを覚えています。感染の報道があっても必ず大丈夫だぁと言ってテレビで会えるとばかり思っていました。

　岡江久美子さんもドラマ、朝の顔として活躍されていましたが、やはり新型コロナウイルス感染による肺炎のために4月24日に亡くなりました。明るく開けっ広げで、前向きで明るい性格は誰からでも好感を持たれていました。朝のテレビ、はなまるマーケットのように退院してから体調を訊ねられたら「はなまる」と言ってもらいたかったですね。

　今回多くの方が亡くなっていますが、 国民的な人気者のお二人には特にショックを覚えました。ご冥福をお祈りいたします。ここからは鬼脚も襲った恐るべき新型コロナウイルス感染の実体験を書かせて頂きます。

それは身体の倦怠感と発熱から始まった

　4月2日に遡ります。2日は週間レース『鬼脚の一筆点評第259回』の締め切り日でした。原稿も書かなくてはならず、早朝より友人と佐世保（ 佐賀〜佐世保、60〜70キロ）まで船の手入れに行く予定もあり慌ただしい朝を迎えました。午前中に船の手入れが終わってほっとした時に、身体の倦怠感を覚えました。午後自宅に戻ったら、発熱もあったので風邪薬を飲んで休みました。発熱は翌日3日金曜日も治まらず、まずは保健所に電話を掛けて、保健所の指示でかかりつけの病院に行きました。

　問診をし、新型コロナウイルス感染ではないとの見解で薬を処方されました。それでも土、日曜日と高熱と倦怠感が続き6日月曜日の午前中に再度かかりつけの病院に行きました。 まず一般的なインフルエンザの検査をし、陰性と分かり胸のレントゲン検査を行いました。 　　

　その後、担当医が保健所に連絡を入れたら検査を行うことになったという趣旨を伝えられました。車で待つようにと指示があり苦しいながらも待機していると、約2時間後に保健所からPCR検査キットが届けられて検査が行われました。倦怠感が続く翌7日火曜日に担当医から連絡があり陽性だったと告げられました。

　頭をよぎったのは、友人や身内へ の感染の心配でした。保健所からの聞き取りを受け、その後1 時間後に保健所から手配された前席と後部座席が完全に仕切られた特別車両で前席に男女2人、後部座席に防護服を着た男性と私で指定病院に運ばれました。

　その後、私との濃厚接触者と判断された約15名が火曜日にPCR検査を行い、水曜日の検査結果でその中では女房だけが陽性でした。女房は電話で「私にだけお土産を持ってきてくれて…もう… 」鬼脚は一番可愛い人にしかお土産はあげないからと伝えました。幸いにも女房は無症状で、私より1 日遅れで入院でした。

陽性と分かり、 友人、 身内への感染が心配になった

　私は午後3時に指定病院に到着。 裏口には5名程の関係者が待機していました。 病室までは何も触れないようにと言われ入院となりました。しかし世界中が新型コロナウイルスに苦しめられている悪魔の病気にコロナという美しい呼び名を付けるべきではないですよね。確かに拡大すれば、コロナに似ています。目視も出来る太陽の周りに真珠色の淡光として見えるものです。外国ではコロナという名前の子供がいじめにあっていました。

　私は釣りをしますが、私なら（キタマクラ・ウイルス）と呼びますね。キタマクラとはカワハギに似たフグ科で猛毒のテトロドキシンを持ちプサイクで、食べたら文字の如く北枕にして横たわらなければならないという意味です。外道では最悪の魚です。

　7日当日は入院前に保健所の聞き取りや、病院では色々な検査が行われ、その後は午後9時頃まで公益財団法人JKAや競輪記者クラプから発病までの経緯などの聞き取りが行われました。さらに翌日午前中も続き、さすがに疲れ果てました。

　当然、私は3月29日最終日の福井ウィナーズカップのテレビ中継のゲスト出演、そして取材もしていたので答える義務がありました。福井で私と接触のあった関係者で感染者が出ていないのには胸を撫で下ろしました。

　安静にするだけで何も治療が無いまま10日金曜日を迎えました。頭痛が続き、肺炎が酷くなり血液中の酸素量が減ってきたと主治医から伝えられ、鼻から管で酸素吸入を始めました。このまま状態が改善しなければ13日月曜日からアビガン錠投与をやりましょうかと進められました。私は即座にお願いしました。当時アビガン錠投与が出来るのは、中等症以上で年齢は50歳以上の希望する人でした。入院して強い解熱剤を8時間ごとに飲み、その都度、汗をかき着替えることの繰り返しで衰弱しましたね。

アビガン錠の投与と抗生剤の点滴

　月曜日に医薬品適応外使用の同意書にサインをしアビガン錠投与が始まり、まず初日は朝夕9錠づつ飲みました。翌日からは朝夕4錠づつになり、抗生剤の点滴も始まりました。　

　アビガン錠投与が始まれば幻覚を見たり、突然奇妙な行動をとる人もいるようだと看護師に言われ、鬼脚も不安を抱いていました。アビガン錠投与2日目の夜ついにその時がやってきました。幻覚ではなかったと思いますが 飛行機に乗っていて墜落する夢を見ました。

　急降下している中、家族に遺書を書こうとしながら墜落のショックに備えて体を丸くし全身に力を入れていました。そうこうするうちに目が覚めて、夢だったことが分かり、全身汗をかいた下着を着替えながらほっとしました。暫くして再度寝ましたが、なんと又飛行機が墜落する夢を見ました。アビガン錠投与の副作用ではなく看護師の説明で洗脳されたようでしたね。

　同時になるべく食べなければと思い、私の子供達や弟に果物や飲み物などその日に身体が受け付けるような物を買って来てもらっていました。アビガン投与から3日目の15日水曜日に変化が表れました。解熱剤を飲まずになんとか朝方、体温が37度4分に収まっていました。お昼になると36度7分まで落ち着きました。その後も体温調整がまともではないものの落ち着き始めました。

　17日のテレビのニュースで1月15日の日本での初感染から今日で1万人に達したことを告げていました。18日は36度8分。睡眠時間も少しづつ長く取れるようになり、体調が少しずつ良くなってきました。その頃になってくると少し食欲も出てきたので、寿司、ステーキ弁当、 焼き烏、 皿うどんなどその日に食べたいも のを家族に差し入れしてもらっていました。

容態が安定し、 軽症者用の病院に転院

　容態が安定してきた42日、軽症者が入院する病院に転院しました。アビガン錠投与が9 日間、抗生剤の点滴が1週間の治療が続き、2週間高熱が続いたので足腰がふらふらでし た。転院した病院ではベランダに出ても良いと言われました。約20日ぶりにベランダに出 て、日光浴をした時は身体にエネルギーが蓄えられる感覚でした。軽い歩行、運動から始め、約1週間体力作りをしたところで、PCR検査が行われ2日連続で陰性だったので退院の許可が下りました。

　5月3日に退院し帰宅するとほっとし、健康が一番だとつくづく思いました。入院中にお見舞いの連絡を頂いた大勢の方々に退院の報告をしました。今回の約1ヶ月の入院は外部との接触が出来なかったので、その分空白です。入院中にすっかり季節が変わっていました。 桜の花は終わり、自宅の庭のハナミズキの花も散っていました。

退院、 1カ月ぶりに帰宅すると幸せの鳥・ツバメが出迎えてくれた

　嬉しかったのは私が帰宅してすぐにツバメが玄関に巣を作り始めたことです。自宅には他にもツバメの巣があり今年も雛が巣立ち、更に2回目の抱卵が始まっています。女房がこれまで何度もツバメが巣を造ろうとしたときに水をかけて阻止してきました。幸せの鳥に何故と聞くと「家はツバメだらけで玄関だけはフンで汚くなるから造らせたくないの… 」しかし今回は我々が無事に退院出来たことを感謝する意味でも、鬼脚女房の目にも涙で、ぐっと我慢して巣造りを見届けることにしたようです。

　この度は公営競技ファン及び公営競技関係者の皆様にはご迷惑とご心配をお掛けしました。心よりお詫び申し上げると共にお礼申し上げます。今回治療にあたって頂いた医療関係者は親身になってくれました。心より感謝申し上げます。今日は8月4日です。

　鬼脚は元気ですよ。